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 総  論

13.日常会話程度の日本語ができる患者の注意点 

 

(1)本当は良くわかっていないことに注意 

 

 外国人患者さんは、まったく日本語ができないという人はまれで、ある程度ができる人が多いように見受けられます。しかし、それも日常生活に使う言葉どまりで、医療に関する会話は理解が難しいと考えておいたほうが無難でしょう。

 問題は、外国人患者さんに「今の説明は、わかりましたか?」と尋ねると、良くわかっていない場合でも「わかりました」と答える人が少なくないことです。フィリピン人やタイ人によく見られますが、そうした「わかりました」は、とりあえずその場を丸く収めるための「わかりました」である可能性があります。最も注意したい点は、医療従事者の方々が「わかりました」という返事をなかなか疑えないということです。つまり、人は普通、理解していないのに「わかりました」と言うはずはないと思っているために、患者さんの「その場しのぎ」を見抜けないことです。

 そして、日常会話ができるとわかると医療従事者の方々は、何とか相手にわかってもらおうという、ゆっくり話す配慮をしなくなるため、患者さんは「わかりません」と言えずに笑顔でうなずくだけになるようです。

 

(2)英語が通じない外国人は多い 

 

 日本人はなぜか、外国人は皆、英語ならば通じると思い込んでいるふしがあります。しかし実際は、各種調査や統計から推測すると、在住外国人のうち英語ができる人は2割〜4割程度に過ぎないといったところです。英語を公用語としている国の出身者であっても高等教育を受けていない人や地方出身者は難しいといいます。まして、医療の場面で使う英語は、日常会話では登場しない用語が多いために、多少英語が通じる患者さんであっても十分な注意が必要となります。

 反対に、医療従事者の方々の英語可能率はどうでしょうか。ある調査では、「診察に困らない程度に英語ができる」と答えた医師は3割程度でした。さらに、そうした医師と業務を共にするであろう看護師の場合は1人だけでした。

 こうしたことから、英語によって外国人患者さんとコミュニケーションが取れるケースは、英語圏の患者さん以外では、ごく少数と考えておいた方が無難でしょう。

 

(3)日常会話程度の患者さんとのコミュニケーションの取り方 

 

 日常会話がある程度ができる外国人患者さんが来院した場合は、医療の言葉は理解できない可能性が高いと思って対応してください。まずは医療通訳の派遣を要請することになりますが、派遣を待てない場合や当座をしのぐ必要がある場合は、以下のような対応策を講じていくとよいでしょう。

 

 a. 多言語に翻訳された医療情報資料の活用

 前項で紹介した多言語問診票や会話集の該当部分を指さししながら、外国人患者さんと確実にコミュニケーションが取れているか確認していくとよいでしょう。また、説明したいことを図解したり、身体器官の図や写真を活用したり、あるいはやさしい単語を使ってゆっくり会話することが重要です。わかっていなくても「わかりました」と答えている可能性も考えて、理解しているかどうかの確認は、慎重に注意深く念押ししながら行うことが肝要となります。

 

 b. 患者さんの緊張をほぐす工夫を

 外国人患者さんの中には、病院に行くと緊張し、日常では日本語ができても、診療場面では詰まってしまう人がいるようです。さらに、体調不良であれば集中力も低下し、母語以外で会話するのが困難になるといいます。そこで、外国人患者さんには、その国の言葉であいさつ(第1章(2))するなどして、リラックスしてから診療に入るのが効果的でしょう。外国人患者さんの緊張が和らげば、日本語もある程度スムーズに出てくると思われます。

 

 c. 医療用語を平易な言葉に

 侵襲、寛解、予後、転帰、軽快、穿孔といった用語は、日本人もわからない医療の世界の言葉です。また、急性期、亜型、排菌、疼痛、開胸などは、文字を見れば意味はわかりますが、音で聞いただけではわかりにくい言葉もあります。

 日本人に対しても同様ですが、特に外国人患者さんには、こうした言葉を平易に表現することが大切です。この場合、よりわかりやすい単語を探すより、言葉を説明してしまうほうが早いと思われます。