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 総  論

18.外国人患者の生活背景 

 

(1)国際結婚の外国人女性の生活背景は日本人配偶者次第 

 

 ここでは、国際結婚の多くを占める、妻が外国人で夫が日本人というパターンを想定して、その外国人女性の生活背景を記載します。結婚の契機としては、結婚仲介業者によるものと外国人女性が働く飲食店で知り合うものが顕著です。

 こうした外国人女性の生活背景をみると、地方都市や農村地域の場合は、異国での文化ストレスに加えて、地方都市や農村地域特有の人間関係によるストレス(外国人女性が都会育ちであればなおさら)、近くに同国人がいないために相談相手ができないことなどが問題となっています。

 都会の場合は、パートナーである日本人男性の生活状況と態度に大きく影響されます。たとえば、男性側が非正規雇用者である場合は生活に困窮するケースもありますし、その場合は健康保険の加入状況もかんばしくないでしょう。

 アジア人女性に対するドメスティック・バイオレンス(DV)もよく聞かれます。外国人の場合は、日本のDV支援制度の情報が入らないことや、在留資格を失うことを懸念して離婚できずに我慢してしまうことなど、日本人の場合以上に事は深刻です。

 なお、国際結婚の外国人患者さんの場合、医療機関の中でのコミュニケーションを考えると、家族である日本人配偶者とは日本語で会話できますので、医師の説明はもっぱら患者さんの配偶者である日本人と行われて、患者さんは何も知らされていなかったという事態が起こりえます。患者さんがどの程度日本語ができるかなど、その場の状況によっても異なりますが、患者さんと直接コミュニケーションを取れるよう、何らかの方策を講じる必要があります。

 

(2)留学生は日本語の問題は少ない 

 

 留学生の多くは、自費で留学している学生です。彼ら彼女らは、日本への渡航費と大学等の学費、住居費などの生活費を出せる程度の家庭環境があると思われますが、実際にはコンビニや飲食店でアルバイトをしている人が少なくないようです。言葉の面では、留学生は日本語がかなりの程度できます。多くの場合、日本語学校で日本語を習得してから大学・大学院等に入学しますし、日本語による講義でも鍛えられるからです。

 また、多くの学校で留学生センターなどを設け、生活支援の取組にも力を入れています。独立行政法人「日本学生支援機構」も支援活動を行っています。留学生の患者さんで生活支援が必要な場合には、こうしたところをリソースの一つとして考えてもいいかもしれません。

 留学生は国民健康保険の加入が義務づけられています。ただ、自己負担の額が高額になると、仕送りや貯金でやりくりできずに生活を圧迫することになりますので、その場合は高額療養費の情報を丁寧に提供してあげるとよいでしょう。

 

(3)工場労働者は生計維持が楽ではない 

 

 外国人が単純労働者として働く場合は、工場への派遣労働の形が多いようです。したがって、景気変動の影響を大きく受け、ときとして長期間仕事が無いなど、不安定な生活状況と言えます。こうした外国人労働者は、多くが日系ブラジル人・日系ペルー人とその家族ですが、日系3世や非日系の配偶者は日本語会話が十分ではありません。また、日系人は容姿は日本人と同じですが、持っている文化は、日系人コロニア出身者以外はブラジルやペルーのそれですから、注意が必要です。

 外国人工場労働者は、日本語が十分でなくても南米人コミュニティの中で生活していけます。その意味で生活支援が必要な場合は、こうしたコミュニティのネットワークが頼りになる場合も多いといいます。たとえば、言葉に自信がない外国人労働者が医療機関にかかる場合は、日本語ができる家族・友人や派遣会社の専属通訳に頼んでいます。

 近い将来に帰国するかそれとも日本に永住するか、揺れている人も少なくありません。そのため、高いお金を払って健康保険や年金に加入する必要をあまり感じない人もいるようです。派遣会社も経費節減のために健康保険の加入手続きに消極的な場合があるといいます。

 

(4)永住者の生活背景は多様 

 

 在留資格「永住者」は、大きく「一般永住者」と「特別永住者」(在日コリアンなどの戦前・戦中から日本に住む朝鮮半島・台湾出身者とその子孫)の2つに分けられます。「一般永住者」は、ほかの在留資格で日本に在留していて一定期間が経過し、永住要件を満たした人が得られるもので、入国していきなり取得できるものではありません。そのため、その生活背景は、どのような在留資格から移行したのかを確認しないとわかりにくいと思われます。たとえば、留学生から日本企業に就職した人であれば、日本語がかなりできますし、生活状況も安定している場合が多いと思われます。国際結婚の場合は、上述のように配偶者や配偶者の家の事情によって問題が異なります。

 言葉の問題をみると、留学生のように専門の日本語教育を受けていない外国人の場合は、長い期間日本に生活していても、会話は日常レベルどまりで読み書きは困難という人も少なくないようです。また、日本に永住するわけですから高齢化の問題もあり、病気や要介護の外国人は今後増えていくと思われます。