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 総  論

20.公的医療保険の加入状況と未払いの可能性 

 

(1)在住外国人も公的医療保険に加入義務あり 

 

 在住外国人も公的医療保険に加入義務があります。国民健康保険の場合は、3か月以上日本に滞在できる在留資格を持っているか、または3か月以上滞在予定である外国人が対象となります。しかし、外国人の中には保険制度の無い国から来た人もいますし、逆に自己負担ゼロという国から来た人もいます。前者であれば、なぜ保険料が徴収されるのか理解できない場合もありますし、後者であれば、保険に入っているのになぜ医療機関でお金を取られるのか納得がいかない場合もあります。保険のしくみをていねいに説明する必要がありそうです。

 

(2)外国人の公的医療保険加入率は8割 

 

 在住外国人の公的医療保険の加入率は、全国いくつかの自治体の調査やNPOの調査を見ると、おおむね8割程度と考えてよさそうです。地域によっても異なるとの報告もありますが、ほとんどの在住外国人は公的医療保険に加入していることになります。ただ、ごく一部に他人の保険証を使用しているケースや病気になってから溯って保険料を支払い加入するケースなども聞きます。とは言え「外国人は保険が無い」というのは、過去の話になっているようです。

 残りの2割の未加入外国人のケースですが、外国人が保険料の給与天引きを敬遠するケースや会社側が掛金負担をきらうケース(その両方)、将来帰国を考えている外国人が年金加入をきらうためにセットとなっている公的医療保険に加入できないケース、あるいは単純に若くて健康だからと加入しないケース、不法滞在者のケースなどが考えられます。いずれも、治療費が高額の場合は未払いにつながる場合がありますので、そうならないように何らかの対応を施す必要がありそうです。

 

(3)治療費未払いのプロセス 

 

 実際に医療機関の治療費未収金の状況を見ると、払えるのに払わない悪質なケースは日本人のほうが多いといいます。ただ、外国人の場合も皆無ではありませんので、その発生プロセスを追ってみましょう。

 まず、公的医療保険未加入者が病気になったところから問題が発生します。保険がないので医療機関に行かずにできる限り我慢したり、売薬で済ませたりしていますが、自然に治癒しない場合は、どうしようもなくなってから医療機関にかかることになります。そのときには病気が重症化している可能性もあり、治療費が高額になってしまいます。

 こうした患者さんが公費負担制度や行旅病人法の対象とならない場合や無料低額診療の情報を知らない場合、医療機関側で患者さんの払える治療費の上限を勘案して治療する配慮をせず、また患者さんの日本語が十分でなく確実な意思疎通が困難であった場合には、払わずに帰ってしまうという結果になってしまいます。この場合にも、多くの外国人患者さんは、上述のような悪質なケースではなく、実際に払えない状況です。

 

(4)治療費未払いの対応策 

 

 上述のような治療費が払えない外国人患者さんの場合は、母国の家族・親族の支援は期待できないかを検討するとともに、地域の同国人コミュニティや教会からの支援の道も探ってみるとよいでしょう。そのいずれも困難であれば、分割払いの可能性を検討することになります。その場合、確実に払ってもらえるよう、支払い意欲の保持のため、たとえば身元や生活状況の確認、友人・知人などの第三者の関与などが有効と思われます。そして最も大切なことは、これらの検討や話し合いを確実に行うためには、医療通訳スタッフによる通訳が不可欠だということです。通訳者を介してコミュニケーションを確保したことにより、未払い問題が解決できたというケースが実際に報告されています。