あいち医療通訳システム トップページ医療機関等外国人対応マニュアル トップページT診療対応マニュアル 1総論>4.韓国の医療と文化の違い

 総  論

4.韓国の医療と文化の違い 

 

 (1)診療行為と患者の医療に対する考え方の異なる点 

 

 診療行為と患者の医療に対する考え方は、日本と大きな違いはありませんが、漢方に対する信頼は厚く、西洋医術が発達した現在でも根強い人気があります。そのため、普通の病院以外に漢方院(ハンイウォン)という医院があります。ここは、漢方医術を専門とする大学で医術を学び、国家試験に合格した漢方医がいて治療をしてくれます。

 韓国の医師は一人で受け持つ患者の数が多く、いつも忙しそうにしていますが、どちらかと言うと日本の医者よりは患者の話をゆっくり聞いてくれます。服薬による治療のほか、軽い風邪でも注射をします。注射は医師ではなく看護師が行います。

 一方、患者さんの医療に対する受け止め方は、医師に対する信頼は強く、医師から言われたことはよく守ります。患者さん個人の主張よりも医師の判断に任せて頼りにします。手術に関する抵抗もあまりなく、医師が必要と言えば素直に従う人のほうが多いようです。

 病気でもないのに、疲れたときは点滴をしに病院に行きます。近頃は、美容と疲れにプラセンタ注射がはやっているようです。男女共に美容に関心が高く、糖尿病でもないのに、太っている人は内科に行って、脂肪を無くす注射をしてもらうとともに、薬も処方してもらいます。美容意識が高いために、まちでは無資格の闇医者に美容整形を受けてトラブルになるケースも少なくありません。

 韓国の人は宗教を信仰している人が多く、信者達はもちろん、神父、シスターや牧師、僧侶等が病室に訪れてお祈りを捧げることがよくあります。

 病院内でも携帯電話を普通に使っています。

 

 

 (2)医療事情の異なる点 

 

 まち中には、きれいな施設を整えた個人病院も多くありますが、それよりも大学病院のような大きな病院を好む傾向があるようで、国・公立、私立の大学病院はいつも混雑しています。これらの大きな総合病院のなかには「特診」という制度があり、通常の診察よりも治療費は高くなりますが、医師を指名でき、また時間の予約ができる病院もあります。

 入院の場合は、患者さんには必ず家族の1人が付き添うことが求められ、ほぼ24時間身の回りの世話をします。ただ、家族が忙しくて付き添えない場合には、お金を払って介護人を雇います。最近では、多忙で付き添えない人で、かつ介護人を雇うお金が無い人のために国から援助が出るようになったと聞きます。

 大きな総合病院の多くは、院内に霊安室が併設されていて、そこで葬儀も行われます。葬儀は、それぞれの信仰に合わせて行われます。霊安室は主に地下に設置されていますが、最近では病院の最上階に設けて雰囲気も明るくするなど、傾向が変わってきているようです。

 薬事情としては、まちの薬局では、日本とほぼ同種類の薬しか買えませんが、避妊薬は処方箋なしでも買えるといいます。

 出産については、日本と同様、自然分娩と帝王切開があり、妊婦検診等も日本と同様です。男の子を好む傾向があり、お腹の赤ちゃんの性別に強い関心を持っているため、生まれる前に知りたがります。入院期間は日本より短めで、自然分娩が2日間、帝王切開は1週間のようです。退院すると直ぐに赤ちゃん同伴で「保養所」という施設に、15日〜1月間ほど入所します。そこで産後の体をケアし、ヨーガ、エステ等を受けて産後のダイエットにも励みます。保養所には保育士、看護師が常勤しており、医師が常駐するところもあるといいます。

 

 (3)特有の病気など 

 

 ファッピョン(火病)という韓国固有の病気があります。原因は、激しい怒りの抑圧と衝撃によるストレスから起きるといいます。症状には個人差がありますが、うつ病に似ていて精神的には、やる気が起こらない、イライラする、自信が持てない、不安、記憶力減退等があり、身体的には、食欲がない、消化不良、のどの渇き、胃の痛み、頻尿、手足の震え、むくみ、動悸、頭痛、慢性疲労等があります。

 こうしたファッピョンのように、治りにくくて、精神的な疾患と思われている病気に対しては、一般的な病院よりは漢方医に頼る人が多いようです。また、体の具合が悪い時も「これはファッピョンたから」と言い、精神的に乗り越えようと努力するなど無理をするため、大きな病気に気がつかない場合もあります。

 

 (4)文化の違い 

 

 韓国の国民性や習慣をながめると、日本より家族の絆が強く、家族をとても大事にしているように見受けられます。今でも長男は家の跡継ぎとして大事にされ、長男の嫁は男の子を産めないと、かたみが狭い思いをするといいます。愛する若者同士が両親の反対で別れるのもめずらしくありません。家系も大事にしていて自分の名字を誇りに思っています。先祖代々の命日にも、家族が祭祀を行うこともあるようです。お盆と正月には、必ず家族が集まり、先祖に茶礼(チャレ)という儀式をした後、お墓参りをします。

 目上の人には必ず丁寧語を使います。初めて会った人にお歳を聞いたりしますが、年上の人を敬い、1歳でも上の人には他人でもオンニ(お姉さん)ヒョンニム(お兄さん)と呼んだりします。また、出身地、出身学校などを聞いて自分との関連を探して仲良くなるきっかけを見つけようとします。一旦、仲良くなったら家族のような付き合いをします。見知らぬ相手に対して不愛想な顔をしていたり、怒ってるように見えることもありますが、話しかけてみたら親切な人が多いです。ただ、仲良くなっても頭をたたいたり、さわったりすると、とても嫌がられますので気をつけましょう。

 お年寄りを敬い親切にします。たとえば、お年寄りがまちで重い荷物を持っているのを見たら、荷物を持ってあげます。公共の場所で席を譲ってあげるのも良く目にします。

 情に厚くて世話やきで、感情をすぐ表に出します。自己主張も強く、他人に自身の意見を押し付けることも多々あります。気が短いために他人とよく喧嘩をする一方で仲直りも早いというのも特徴かもしれません。思っていることは、はっきり外に出す人が多いようです。遠まわしな言い方をする人は、あまりいません。そのため、直接的に言わないと理解してくれない場合があります。また、社交辞令は通じないといいます。社交辞令で言ったことは、本気に取られてしまいます。

 宗教は、人口の約3割がクリスチャンで、仏教が2割、残りの半分が無神論者といいます。占いを好む人も多く、大学受験、就職、縁談や家を買うときなど、人生の節目節目で占いをします。また、何かに行き詰まった時などは「ムダン」と呼ばれる巫女(神子)にお払いしてもらうことも多いようです。

 名前の呼び方も覚えておいたほうがいいかもしれません。日本と同様に姓だけでもよいのですが、韓国は姓の数が少ないので、たとえば「金 ○○さん」とフルネームで呼ぶことが多いようです。名前の多くは漢字で標記しますが、日本語と読み方が違うので、日本読みで呼ばれると違和感を覚えるようです。たとえば、金は「キム」、李は「イ」、鄭は「ジョン」、韓は「ハン」と読みます。日本人には発音できない名字も多くありますが、発音できる名前であれば、本人に聞いて韓国語読みで呼んであげたほうが親近感がわくと思われます。

 食文化については、野菜を多く食べることやキムチ(2種類以上)、ナムルなどが常に出されること、にんにくをたっぷり使った料理が多いことが特徴です。日本では焼肉が韓国料理の代表格のように思われていますが、焼肉を誰でもお腹いっぱい食べるようになったのはつい最近のことです。焼肉料理のときにも、肉を野菜に包むなど、野菜を多くとります。栄養指導などの場合には、焼肉を頭に思い浮かべないほうが先入観を防げるのでよいかもしれません。