あいち医療通訳システム トップページ医療機関等外国人対応マニュアル トップページⅠ診療対応マニュアル 1総論>5.中国の医療と文化の違い

 総  論

5.中国の医療と文化の違い 

 
 (1)診療行為と患者の医療に対する考え方の異なる点 

 

 中国の医師は、忙しいので患者さんの話をあまりじっくり聞きたがらないといいます。医師と患者の関係は、日本よりも対等な感じで、遠慮することなく平気で何でも質問します。また、しっかりと主張をし、治療法の希望を言ったり、薬の処方の方法にも注文を付けたりするようです。医師が多忙であることや人々の医療知識の不足もあって、日本のようなインフォームド・コンセントはほとんど行われないようです。セカンドオピニオンは、普通に行われているといいます。もう1つ日本と違うのは、重大疾患の告知について、なるべく本人を避けて、まずは家族に告げるように配慮しています。

 中国人は漢方薬をよく好み、漢方専門医科大学なども多くあります。生活の中で常に漢方的な考え方で体調を管理している人も少なくないといいます。たとえば、風邪一つとってみても、「風寒」と「風熱」とに分け、服薬やケアの仕方も変えています。漢方薬は一般的に副作用が少なく、価格が安いと考えられ、大いに愛用されているようです。ただ、漢方以外の薬についても自分で服薬コントロールできると考え、効かないと思ったら倍の量を飲んだり、回数を増やしたりしますので、要注意でしょう。

 治療法では、服薬よりも注射を好むようです。日本でも医師に注射の依頼をする中国人を見かけます。

 

 (2)医療事情の異なる点 

 

 中国の医療機関(総合病院・専門病院・感染症予防療養院・婦女幼児保健所など)は基本的に「国営」ですが、近年、外資合弁のクリニックや眼科・歯科などの個人開業医もできてきました。総合病院は、カバーする地域の広さや病床数などの設備、主任クラス医師の定員など、医療サービスのレベルによって、9つの区分に分けられています。特に日本と異なる点は診療料金の先払い制で、検査を受けるのも、薬をもらうのも、料金を払った領収書の提示によって受けられるという徹底ぶりです。入院や手術の場合は、ディポジット制を取っている病院も多いといいます。

 各種医療機関の中で、教授クラスの医師が多い大型の総合病院や大学病院に多大な信頼が寄せられています。紹介状なしで受診できますので、軽い病気でもこうした大病院にかかります。その結果として、大きい病院ほどいつも大混雑という状況に陥るようです。中国人患者さんから、よく「どこそこの病院が大きいですか」と質問されますが、大きいかどうかで病院を評価する傾向があるようです。一方、地方に行くと、こうした大病院がないため、専門的な治療や高度な治療は難しいところです。日本在住の中国人患者さんに帰国治療を勧める場合は、本国での居住地域や所得の状況などを考慮する必要があります。

 看護師も日本と比べても不足しているため、入院では家族による付き添いが必要になります。食事の差し入れも普通に行われています。ただ、近年、余裕のある家庭では、お金を出して付き添い介護のヘルパーを雇うケースも増えているようです。

 公的医療保険制度は対象者別にできていて、都市従業者基本医療保険及び都市住民基本医療保険、公務員医療補助、農村コミュニティ医療制度の4つに分かれています。また、特定生活困窮者には医療扶助制度も整備され、順次全国に普及していくとされています。

 薬事情でも異なる点があります。まちの薬局で処方箋がなくても買える薬(たとえば利尿剤など)がたくさんあります。病気になっても医療機関に行くゆとりが無い人は、薬局で薬を買って済ませています。

 出産については、妊婦検診は妊娠判明時と出産予定日前の2回だけで、すべて自費といいます。妊婦さんは妊娠中に体重が増えても、赤ちゃんへの影響を気にせず、むしろ赤ちゃんが小さいことを心配します。産後は1か月間、家事や入浴など一切せずに身体を休めることに専念します。

 また、「優生優育」という考え方が強く、妊婦健診で異常を見つけた場合や、妊娠中に赤ちゃんに影響を及ぼす恐れがある病気にかかった場合は、人工中絶を選ぶ方が多いといいます。

 

 (3)特有の病気 

 

 中国だけに特有のものかどうかわかりませんが、ヨード欠乏症として甲状腺の異常(吉林省が中心に多いといいます。)が見受けられるようです。中国では食塩にヨードを添加することを法律で決められているといいます。

 フッ素中毒(歯のエナメル質形成障害、関節変性病変)やセレン欠乏症(カシンベック病や克山病)も聞かれるようです。

 

 (4)文化の違い 

 

 中国には56の民族が暮らしており、多民族多文化国家と言えます。うち漢民族が9割を占めますが、ウィグル族などイスラム教徒の民族も多くいます。また、モンゴルに隣接する内モンゴル自治区のモンゴル族や北朝鮮に隣接する吉林省の朝鮮族、インド・ネパールに隣接するチベット自治区のチベット族など、多様な民族構成を見せています。

 地域や歴史形成の経緯によって、同じ漢民族でも言語がたくさんあります。北京語を標準語とし、中国大陸と台湾で広く使用されていますが、福建省と台湾の南(ミンナン)語、香港や広州の広東語、上海を代表とする呉儂(ウーノン)語(上海語)は、お互いまったく通じない別の言語と考えたほうがいいでしょう。文章は共通ですが、中国大陸で使われている簡体字(省略漢字)と台湾・香港・東南アジアなどで使われている繁体字(旧字体)は、お互いに読めない場合もありますので注意が必要です。

 名前の呼び方も配慮が必要です。漢字で書かれていますので、日本語の読み方でいけそうですが、中国語の読み方をする人もいます。どう発音すればよいか、患者さんに尋ねる必要があります。

 中国の国民性については、黄河文明以来、幾度にも及ぶ王朝の変遷や異民族同士の通婚統合を経て、今の国民性が形成されているといいます。よく「大陸的」と言われるように、細かいことを気にせず、よく言えばおおらか、悪く言えばいい加減ということでしょうか。ただ、「理」を追求する傾向は強いようです。

 また、公的な制度やシステムに頼るよりは、自分を信じる傾向があります。「家族」という概念は、夫婦と子どもという核家族の概念よりも、血のつながっている三等親までをイメージした方がいいでしょう。時に本当の母親よりも父方の叔母が家族の最高決定権を握っている場合もあるようです。いまの中国は著しい近代化と都市化進んでいますが、まだまだ親子関係は強く、親を敬い、大事にし、親の言うことを無視できない風潮があるといいます。

 他人に対しては、簡単には信用しないが、言いたいことを言い合って、一旦友たちと認めたら、その人のために犠牲を惜しまない傾向もあるようです。