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 総  論

6.ブラジルの医療と文化の違い 

 

 (1)診療行為と患者の医療に対する考え方の異なる点 

 

 ブラジルの医師は患者さんの話をよく聞き、ていねいに対応する点が日本と異なるといいます。また、栄養指導面でも、日本と比べるとかなり詳細なリストが患者に渡されます。そのリストにある食べ物をいかに組み合わせてストレスのない食事にするかというところに焦点が当たっています。糖尿病患者にも、それぞれ食べてもよい量を示すとともに果物を食べることをすすめているものもあります。

 薬についても、何のためにどのくらい飲まなければならないのかと言ったことを具体的に理解していないと、良くなった時点で中止してしまうこともあるようです。処方の仕方も異なっており、総じて強めのものを短期間服用として出されるようです。日系南米人患者さんの中には、日本の薬は効かないと思いこんでしまっている人が少なくないようです。また、母国の薬を飲み続けていることもありますので、注意が必要です。

 なお、医療機関への受診に当たっては、連絡なしのキャンセルがときおり発生しています。これも、事前に連絡を入れてほしいものですので、次回予約の日程調整のときは、無断キャンセルをされると何がどう困るか具体的に説明しておくとよいでしょう。

 

 (2)医療事情の異なる点 

 

 ブラジルの都市部では、かなり医療水準は高く、最先端に位置する診療科も多いようです。医師の多くは、病院の勤務医であるとともに自分のクリニックを持っていることが多いといいます。しかし、地方に行くと病院も少なく、満足な医療を受けることができないといった地域差があります。各地域に保健所はあり、簡単な診療は保健所でもやっています。

 公立病院は、無料で診療を受けることができますが、朝から長蛇の列、手術の期日についても順番待ちで数年後という状態で満足に治療を受けることができない状況です。これを解消するために各自治体で24時間体制の医療施設の建設が始まっているようですが、これについても都市の中心部では機能し始めましたが、周辺部ではまだまだ地域の保健所に頼る状況だといいます。

 公的医療保険制度ではありませんが、健康保険というものは存在していて、個人で入るもの、勤めている会社が掛け金を半分、残りの部分を労働者が払う(日本の社会保険と同様に扶養家族もこの保険で医療を受けられます)というものもあります。個人で入る場合は、入るときにどのような検査が年に何回できるか、先進医療はどこまで受けられるかなど、極めて細かく自分自身で決めて入ることになるそうです。また、会社に勤めている場合の健康保険については、会社の入っている保険会社の保険ということになるわけで、会社のレベルによっても受けられる医療の質は変わってくるかもしれません。こういった保険は、保険会社が提携している病院に行くということになります。

 出産は、自然分娩、帝王切開のどちらもありますが、自然分娩の場合も無痛分娩を望む人が多いようです。どちらにするかは、妊婦さんの希望が最優先されますので、日本では必ず帝王切開にするような例でも、危険性も話したうえで自然分娩が選択されることもあります。また、時間の問題(夜、産気づいたときに病院まで行く)や医師の不在時に陣痛が起ってしまい、医療事故につながるということが懸念されるため、計画的に帝王切開を望む妊婦さんが多いということです。妊婦の体重管理が緩いことも特徴かもしれません。日本の体重増減感覚と比較すると、多少太ったくらいでは「増」のうちに入らないといった、かなりアバウトな数値の捉え方をするようです。産後の入院期間はたいへん短く、自然分娩の場合は、出産後、その日にシャワーを浴び、次の日には退院します。帝王切開でも3日くらいで家に帰るといいます。

 

 (3)特有の病気 

 

 南米の農村地域によく見られる病気としてシャーガス病があり、アメリカ合衆国でも南米からの移民に感染が認められるといいますから、日本でも日系南米人の感染が懸念されます。

 

 (4)文化の違い 

 

 日系ブラジル人で現地の日系人のコロニア(集住地区)出身の人たちは、日本の習慣をきちんと身につけている人が少なくありません。また、ブラジルにいた時には強く自分は日本人だと思って生活してきています。日本に来たとたんにブラジル人と言われ、アイデンティティをどこに求めたらよいか悩んでいる人たちも見かけます。

 ブラジルでは、家族を非常に大切にし、またそれぞれの誕生日を皆で集まって祝うのは当然といった考えがありますので、入院・退院の日程希望にそうした要素が入ることもあるかもしれません。

 ブラジルの宗教は90%がカトリックと言われています。ただ、日曜の朝は教会へ行くと言う人はそれほど多くはないようです。日本在住のブラジル人はよく教会に集まりますが、同国人同士の情報交換などネットワークをつくるという側面が大きいのではないかと思われます。

 食文化については、夕食時間が21時くらいから始まるのが最も日本と異なる点かもしれません。おそらく、ブラジル人患者さんにとって病院の食事時間は、とても早いと感じていると思います。料理については、量が多いことや肉食に偏っていること、超甘いものをよく食べることが特徴としてあげられます。