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 総  論

9.アメリカ合衆国の医療と文化の違い 

 

 (1)診療行為と患者の医療に対する考え方の異なる点 

 

 アメリカ合衆国(以下「米国」と略す。)は移民の国ですから、米国文化といっても移民の出身国の数だけあるとも言えそうです。医療機関の問診票には、どんな人種・民族の血を引いているかをおさえる意味で家族構成を尋ねる項目が必ず設定されているといいます。医師と患者との会話でも、血筋について詳しく交わされるのが一般的のようです。

高血圧症や心臓病、糖尿病、がん、腎臓疾患などは、生活環境と遺伝の両方によるところが大きいと考えられているからです。

 友人・知人との日常会話でも、「自分は○×系の血が8分の1入っているから、△□は食べない方がよい」とか「あなたは4分の1△○系だから糖尿になりやすいのですね」、髪や肌の色から「皮膚がんにかかりやすいから直射日光に長く当たるのは避けた方がよい」、「血圧は肌の色が白い人より黒い人のほうが高い」、「インド系の人や先住民の子孫は糖尿病にかかりやすい」といったフレーズが普通に交わされるようです。このように米国では、病気の原因を生活習慣のほかに、人種・民族の疾病傾向と結びつけて考えるのが常識になっているといいます。

 米国では、医療はサービス業であり、患者さんはカスタマーであるという意識が医療側にも患者さん側にも浸透しています。医師は自己紹介のあと「どこから来たのか」とか「天気がいいね」などと軽い会話を交わすことがあるといいます。それによって患者さんをリラックスさせ、訴えたいことを余さず言わせることができるようです。

 

 (2)医療事情の異なる点 

 

 米国は、医師と看護師の間で上下関係があまり感じられず、互いにファーストネームで呼び合い、一緒に働く仲間であるという意識が強いようです。

 米国の医療保険は、民間の保険会社や団体が販売するものが中心となっています。保険契約の内容は、どこまで保険でカバーするかによって非常に細かく分かれており、それによって当然値段も異なります。平均的な家族の年間保険料は80万円とも100万円ともいいますから、保険未加入の人も数千万人いるようです。また、保険の対象となる医療機関も指定されているようで、たとえば有名大手病院や大学付属病院に行っても保険契約上対象外であれば、医療機関側も門前払いをするといいます。とは言え、65歳以上の高齢者にはメディケア、低所得者にはメイディケイドという公的医療保険は用意されてはいます。

 このように米国の医療は普通の市民にとっては高額なので、市販薬で済ませる傾向があるようです。サプリメントや健康補助食品などもよく飲まれていて、薬局には日本より多様な薬や健康食品が置いてあります。

 出産に関して異なる点は、米国の産婦人科は、診察台のカーテンがなく、患者さんと医師は、向かい合って話をしながら診察するそうです。患者さんにとっては日本のようにカーテンがある方が、何をされているのかわからず怖いといいます。また、米国はキリスト教の影響が強いため、医師も人工中絶に対して日本より厳しく考える傾向があり、極端に言うと中絶イコール殺人という意識があります。

 米国は歯科診療が高額なことでも有名です。歯科対象の保険料も高額なため、歯科の医療保険に入っている家庭はまれだといいます。最近は水道水にフッ素は入れる州や市は増え、虫歯の無い世代も珍しくないようです。そうした地域の歯科医は、歯の治療というよりは、むしろ歯並びの矯正や定期健診、親知らずが生える際のケアなどが仕事の中心となっているといいます。

 

 (3)特有の病気 

 

 米国に特有の病気というのは聞こえてきませんが、移民の国であるため、たとえば、第6項のブラジルのところで紹介したシャーガス病など、世界各国の風土病やその国特有の病気が移民の多い地域を中心に持ち込まれている可能性があります。

 

 (4)文化の違い 

 

 米国人はキリスト教の影響から、どこにいても「いつも神が見ている」と感じています。病気やけがで入院したときなど、教会の聖職者が病床に来て家族同然に慰めたり祈ったりしてくれます。また、高ストレス社会なのか、その解消のために雨の日も風の日も毎日欠かさずジョギングをしたり、精神的な安定を求めてペットをたくさん飼ったりします。カウンセラーのところに通うのも普通のことで、日本のように隠したりしないといいます。家族や友人に悩みをぶつけて巻き込むより、その道のプロに任せるべきだという考えが行き渡っているということでしょう。

 米国は奉仕の精神が広く行き渡っていて、ボランティア大国といえます。具体的には、各宗教の教会や寺院、民族コミュニティ、地縁組織などの奉仕活動が活発に行われています。この中には医療を提供するボランティアも見られ、低所得者や貧困層のセーフティネットとなっているようです。

 米国の食事文化を見ると、その多様性と極端さが見えてきます。どの店にもベジタリアン向けのメニューがあり、アレルギー体質の人向けに街には必ずと言っていいほど有機栽培食材店があります。きっちりカロリーコントロールする人もたくさんいる反面、主食をあまりとらずに肉食を好み、いつでも甘い物を口にしている人もたくさんいます。

 米国でも中華料理はよく食べられていますし、最近は日本料理も浸透してきましたので、箸の使用はそれほど問題ないものと思われます。